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森からつくる家

とやまの木は、とやまに家になりたい。

 富山で暮らしていると、いつしか日常的な風景になっているが、身近な里山から山麓まで富山には本当に豊かな森林が息づいている。総土地面積の67%を森林が占め、まさに“緑の王国”といえる。しかし実際に私たちが森を訪ねる機会など、ごく少ないのが現実だ。県民にとっては近くて遠い存在である富山の森。そこでは戦後に植栽・造成された約5万ヘクタールの人工林が、本格的な利用可能な時期を迎えている。
 富山県の人工林の9割以上はスギ(タテヤマスギ・ボカスギなど)だ。したがって県内で伐採・製材される富山県産材はスギが中心となる。住宅に使える質であるのか疑問を持つ人がいるかもしれないが、十分な強度と耐久性が県の研究機関によって検証されている。しかも加工しやすく、ねばり強さを併せ持った建築資材として、これまでも梁や柱など構造材、床や板壁などの仕上げ材として利用されてきた。今、富山の森では成熟した良質のスギが、家づくりに使われることを待っているのだ。

若木のうちの手入れでまっすぐに美しく。

 澄んだ冷気のなか、林立するスギの幹が木漏れ日に輝く…晩秋の早朝、立山山麓のスギ林を訪れた。案内していただいた立山山麓森林組合の谷口弘聡さんによれば、スギの植樹は意図的に混み合うように行う。まっすぐ早く成長する性質を利用して互いに成長を競わせ、より強く伸びる木を生かして間伐する。1ヘクタールに約2千5百本植栽し、最終的に700〜800本に育て上げるとのことだ。
 木材としての品質を左右するのは、若木のうちの手入れだという。丹念に枝打ちして節を巻き込みながら成長させ、節のないまっすぐな木に育てていく。「良質な4メートル材を2本とるためには、根元から高さ8メートルまでの手入れが重要」という。8mに育てるまでが、木の価値を決める“勝負”どころだ。
 冬の積雪が多い富山のスギは、どうしても根元が雪の重みで曲がる。まっすぐな木材をとれる部分が、この“根曲がり”の分だけ減ることになるが、「やはり積雪に耐え抜いて育ったスギこそ、富山の家にふさわしいと思います」と谷口さんは語る。
 植樹して20〜30年経つと頻繁な枝打ちは必要なくなるが、成長とともに幹は太く、枝葉も広がり続ける。次第に木々が混み合って、森に光が入り込めなくなるのを防ぐために間伐は継続して行うことが肝心だ。そうして木の元や地面まで光が届く森では、下草も盛んに茂る。下草が茂っているのは、森が健康な証しだ。
 間伐されず光の入らない森では下草が育たず枯れてしまう。そうして地表がむきだしになると、森の保水力が低下し、土砂の流出などが起きやすい状態に至ってしまう。森や木が手入れされて健やかであり続けることは、土砂災害を防ぐためにも欠かせないのだ。

厳しい四季に鍛えられて木は育つ

 訪ねたスギ林では間伐された木が、搬出を待って、何本も横たわっていた。木を切ると聞けば、短絡的に環境破壊をイメージしてしまいがちだ。だが成熟した木を切って使い、使った分を植樹していくことで森は若返り、また育っていく。このような循環が成り立ってこそ森は守られる。
 富山では林業に携わる人が不足しており、また山の所有者が森林を守り続けることが困難なケースも多い。木を使う家づくりが広がれば、林業に活力が生まれ、森を育む循環を取り戻すことにもつながる。
 視点をもう一度、家づくりに絞ってみれば、富山の木で建てることの最も特徴的な点は、希望すれば実際に森で木と“お見合い”をして、わが家になる木を確かめながら選べることではないだろうか。お見合いをとりもつ工務店や森林組合などはあるものの、希望する人はまだ少ないという。だがこのような森から始める家づくりこそ、富山の木で建てる醍醐味ともいえる。

 立山山麓の森には、樹齢100年を超えるタテヤマスギの展示林がある。森林の持ち主が先祖から受け継いだ宝として大切に手入れし、森と木にふれる貴重な場として公開されている。厳かな気配さえ漂うその森のそばに立つだけで、生命力や美しさなど木の魅力が五感に伝わる。「より多くの方々に、もっと木とふれ、木を知り、木を“見る目”を養ってほしい」と谷口さんは願う。
 そして何よりも“森から家をつくる”ことには、ワクワクするような楽しさがある。富山の木を使う家づくりは家族にとってかけがえのない体験となり、自然や木への理解、家への愛着、とりわけ子どもたちの心の成長など、見えないけれど豊かな財産をもたらしてくれるのではないだろうか。・・・
(この続きは住宅情報誌「スミタク2012」で)

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